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認知症の原因・初期症状は?冬場に悪化しやすい認知症の予防のためにできること

今や600万人が有病者といわれる認知症。発症すると、記憶や理解力・判断力の低下によって、社会生活や日常生活に支障をきたすことがあります。特に冬場は外出の機会が減り、日照時間の低下による「冬季うつ」にも関連して認知症が悪化しやすい時期。高齢のご家族がいる方は、認知症に関する理解を深めておきたいものです。この記事では、認知症の原因や初期症状、認知症を予防するための対策などを紹介します。
※2021年1月公開

 

認知症とは

認知症とは、生後いったん発達した知的機能が後天的・持続的に低下する状態のことをいいます。認知症が進行すると、記憶力だけでなく理解力や判断力が低下し、社会生活や日常生活に支障が出るようになります。特に独居や高齢夫婦のみの世帯が増えている昨今、認知症があると暮らしが成り立たなくなってきます。現在、日本全国での推定患者数は600万人程度であり、65歳以上の6人に1人程度が認知症有病者と言えます。

 

認知症の原因と種類

認知症には原因により、さまざまなタイプがあります。

アルツハイマー型認知症

認知症患者のうち最も多いとされているのが、アルツハイマー型認知症です。症状は物忘れで発症しますが、昔の記憶はある程度保たれており、第3者が初期は気づきにくいのが特徴です。自分で「ボケた」という自覚がなく、他人に指摘されることが多く、進行すると、判断力・理解力、言葉が出にくいなど能力全般に低下が見られるようになります。アルツハイマー型認知症の原因ははっきりとは分かっていませんが、有力な説としては、脳に「アミロイドβ蛋白(たんぱく)」やタウ蛋白という物質が凝集・蓄積し、神経細胞が死滅することが原因だと考えられています。

血管性認知症

アルツハイマー型に次いで多いのが血管性認知症です。日時・場所などの見当識障害や計算ができないなどの注意障害に加えて、怒りっぽくなったりイライラしたりといった症状が特徴です。脳の障害部位によってはうつや意欲低下、言語理解、失語などの多彩な症状が出現します。また、歩行障害や半身の麻痺、感覚障害、半盲などの症状を合併することも多い認知症です。血管型認知症は、脳梗塞や脳出血・くも膜下出血など微細な脳血管疾患を繰り返すことで発症しますが、部位によっては急激に認知機能が悪化します。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、「レビー小体」と呼ばれる異常なタンパク質(α-シヌクレイン)が凝集・蓄積し、ドパミン神経をはじめとする神経細胞が減少することによって発現すると考えられています。レビー小体型認知症では、昼間は普通なのに夜間になると混乱する、といった変動する認知機能障害が特徴ですが、手足が震える・小刻みな歩行、運動緩慢といったパーキンソン症状、寝ているときに大声を出す、バタバタ手足を動かすなどのレム期睡眠行動異常症、動物やヒトなどありありとした幻視を見るなどの症状が現れます。

その他

代表的な3つの認知症のほかに、前頭葉と側頭葉が萎縮する前頭側頭型認知症や、治療可能なものとして正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫、脳腫瘍、神経梅毒、甲状腺機能低下症、アルコール、糖尿病、ビタミン欠乏症などが原因で生じる認知症もあります。

 

日照時間が短い冬は「認知症の悪化」の恐れが

日照時間が少ない冬は、「冬季うつ病」が発症しやすい季節です。うつ病になると、認知能力が低下しやすく、認知症の悪化につながる恐れが。症状が悪化すると、どのような服を着たら良いのか判断できずに薄着で生活したり外出したりして、迷子になると低体温に陥るリスクも考えられます。高齢のご家族がいる方は、冬場は特にまめに連絡をとり、カーテンを開けて日光を浴びさせ、日頃の言動を注意深く見守る必要があると言えるでしょう。

 

【チェックリスト】認知症の初期症状とは

認知症は、進行するにつれて症状が深刻化し、社会生活や日常生活に支障をきたすようになります。そのため、初期の段階でご家族や周りの方が異変に気づき、適切な対処をすることが重要です。認知症の初期段階では、以下のような症状が現れます。

記銘力の低下

・同じことを何度も話したり、聞いたりする
・いつも何か探し物をしている
・記憶がすっぽり抜けることがある
・新しいことが覚えられない
・同じものばかり買ってきてしまう

時間感覚の低下

・日付や曜日がわからなくなった
・昼間と勘違いして夜中に出かけようとする
・真冬なのに薄手の服(季節の異なる服)を選ぶ

無気力・無関心

・入浴や着替えをしない
・身なりがだらしなくなった
・趣味や好きなことに興味がなくなった
・うつ状態

性格の変化

・怒りっぽくなった
・イライラしやすくなった
・以前と性格が変わった

取り繕い

・話のつじつまが合わないことが増えた
・質問に答えられない場合、家族に聞いてその場をやり過ごす(振り向き兆候)

判断力・実行力の低下

・家事などの慣れた作業がうまくできなくなった
・慣れた道でも迷うことが増えた
・金銭管理ができず、悪徳商法や詐欺に引っかかってしまう

 

「認知症かもしれない」と感じたら、病院へ

家族や親しい人に認知症が疑われる際は、早い段階で一度病院を受診しましょう。

認知症の検査と診断方法

認知症の検査では、問診や認知機能検査(長谷川式記銘力評価スケール、ミニメンタルテストなど)、CT、MRI、脳血流シンチ(SPECT)を使った脳の画像検査や採血などが行われます。

認知症の治療方法

アルツハイマー型認知症に対しての根治療法はまだ確立されておらず、対症療法がメインとなります。病院での治療は、認知機能や易怒性などの周辺症状を改善するための薬の処方、「夜眠れない」「夜中に起きてしまう」などの睡眠障害がある場合は適切な睡眠薬の処方、リハビリなどが行われます。
レビー 小体型認知症に対してはパーキンソン症状や幻視、レム期睡眠行動異常症、便秘や立ちくらみ、排尿障害など多彩な症状に応じた薬物治療が行われます。

治療可能なタイプの認知症もある

認知症の種類によっては治療可能なものもあります。(正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫、脳腫瘍、神経梅毒、甲状腺機能低下、ビタミン欠乏症、透析、アルコール性、肝硬変、糖尿病による認知症など)。治せる認知症を見逃さないためにも、まずは検査と診断を受けることが大切だと言えます。

病院への受診は、家族の負担を減らすためにも必要

アルツハイマー型や血管性の認知症に対する有効な治療法はまだありません。しかし、認知症と診断された場合、市町村からのサポートや介護保険サービスが受けられるようにもなります。また運転免許更新をやめさせ、交通事故を防ぐことにもつながります。家族の負担を軽減するためにも病院への受診をおすすめします。

 

認知症の予防方法

長生きすれば誰でもかかる可能性のある認知症。早いうちから認知症の予防対策を行いましょう。

生活習慣病を改善・治療する

アルツハイマー型認知症や血管性認知症は、糖尿病や脳血管障害など生活習慣から引き起こされる病気との関連が強いと考えられています。これらの疾患の治療や予防が、間接的に認知症予防につながると言えます。

筋トレやストレッチなどの運動を習慣化する

運動は認知症の予防に効果があるという高いエビデンスがあります。運動は脳内でのBDNFなどの神経栄養因子を増加させるだけでなく、筋肉を使うとマイオカインというホルモンが分泌され、脳機能や認知機能の改善に効果があることが近年わかってきています。冬場は特に動くのが億劫になって活動量が減りがちですが、ストレッチや筋トレなどおうちでもできる運動を積極的に取り入れるようにしましょう。

人との交流を持つ

他人との会話や交流は、生活に豊かさを与え、脳の刺激にもなります。コロナ禍では特に他人との接触機会が減りがちですが、ビデオ通話やSNSなど新しい方法も取り入れて、他人との交流機会をつくるようにしましょう。

食生活を見直す

・塩分を控える

塩分過多の食事は、高血圧や動脈硬化などの原因となるため、間接的に血管性認知症のリスクを高めます。料理を作る際に調味料をきちんと測る・減塩タイプの調味料を選ぶなど、1日の塩分摂取量を守ることが大切です。

・糖質を控える

糖尿病患者は、認知症の発症率が高いことがわかっています。糖尿病の原因となりうる糖質の摂取を控えることが大事です。お菓子などの糖分が高い食べ物を控えたり、糖質の多い主食を減らしたりなどの工夫を。

・揚げ物やジャンクフードは控える

脂質、特に飽和脂肪酸のとりすぎは、動脈硬化を招き、間接的に認知症のリスクを高めます。飽和脂肪酸を多く含む肉類の脂や揚げ物・ジャンクフードは控えるようにしましょう。

・肉よりも魚を積極的に食べる

一方、脂質の中でも不飽和脂肪酸と呼ばれるものには、中性脂肪やコレステロールの低下作用があります。魚には、不飽和脂肪酸が豊富に含まれているので、肉より魚を意識的に選ぶようにしましょう。

長期的なクロレラの摂取も予防につながる?

血管性認知症の危険因子としては、糖尿病や脂質異常症・高ホモシステイン血症が挙げられます。また、認知症患者の血液中には、過酸化脂質の濃度が高い老化赤血球が多いことがわかっています。

「ホモシステイン」の代謝には、葉酸やビタミンB12が、また過酸化脂質産生の抑制にはルテインという成分が関係しています。クロレラは「葉酸・ビタミンB12・ルテイン」を含んだ食品で、血管性認知症の予防につながる可能性があるとされていました。

そこで、クロレラと血管性認知症の関係を調べる研究を行ったところ、血管性認知症の予防につながる可能性が示されました。研究によってわかったのは以下の3つです。

  • クロレラの摂取によって「血管性認知症の危険因子である血中ホモシステインが大きく低下する
  • クロレラの摂取によって「血管性認知症の危険因子を減らす血液中葉酸・ビタミンB12が増加する
  • クロレラの摂取によって「血管性認知症の危険因子を減らす赤血球中ルテイン濃度が増加する

以上のことから、長期的なクロレラの摂取は血管性認知症予防につながる可能性が期待されます。

▶研究内容や結果について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

まとめ

進行すると社会生活や日常生活に大きな支障をきたす認知症。本人では自覚しにくいこともあり、早期発見には周囲の気付きが大切になります。特に冬場は認知症が進行しやすい時期。今回ご紹介した予防対策を行いつつ、まめに連絡を取って日頃の言動を注意深く見守るようにしましょう。

 

この記事の監修医師

大阪赤十字病院 脳神経内科主任部長 髙橋 牧郎

京都大学医学部医学科卒業後、さまざまな総合病院、国内外の医科大学での研究・勤務を経て、現在は大阪赤十字病院の脳神経内科主任部長を務める。専門分野は、脳神経内科全般・パーキンソン病・認知症・頭痛・老年医学・脳卒中など。
URL: https://www.osaka-med.jrc.or.jp/